第3期 第1回医鍼連携研修を、オンラインにて開催しました。
期間:2021年5月23日(日)〜5月29日(日)
カリキュラム
【臨床各論共通テーマ】 COMMON DISEASE への対応を確実に身につける 頸肩腕痛
【東洋医学的な考え方について系統的な講義】 中医鍼灸・経絡治療 : 東洋医学の全体像
現代医学
諏訪中央病院 須田万勢先生による講義です。現代医学の診断学の問診では、痛みを訴える頸部の部位とその経過で鑑別や重要度が異なるそうで、その鑑別を教わりました。中でも頸部前半分に痛みがでる疾患は、鍼灸師の関わりが難しいものが多いとのことでした。
また、一刻を争い命に関わる・早急な対応が必要な・西洋医学の方が早くよくなる、見逃してはいけない三種の疾患と、鍼灸の方がよくできる可能性がある疾患の解説がありました。
続いて頸椎神経根症の解剖、放散痛の出方、診察手技、痛みが広範囲にわたる時の鑑別と講義が進みます。デルマトーム・ファシアトーム・アンギオソームなど、広い範囲に渡る痛みの際に参考にする様々な感覚入力の分布図が示されました。
須田先生が実施しているエコーガイド下で注射により異常なファシアをリリースする手技 Fascia hydrorelease の映像を見、最後に講義中に紹介された問診方法を元に症例検討がありました。
現代鍼灸
どう病態把握をするか、医療従事者と共通の評価法で所見を取る事が重要と、医鍼連携の要件が語られ講義が始まりました。
まず頸椎症性脊髄症ガイドラインより頸肩腕症候群の定義や分類の確認をし、診断チャート、神経根症の症状と出現までの期間、診断指標の紹介がありました。頸部神経根症における多様な症候の原因は圧迫されている箇所により説明できるとのことでした。
コクランレポートからの頸椎症性神経根症の鍼のエビデンスに続き、治療に使用する経穴やその効果機序、評価、鍼灸治療の適応・不適応の解説がありました。
エビデンス紹介は局所注射・鍼治療群間の経時的変化パターンで鍼治療群で優位な改善が認められたというもので、この差の原因となる痛みの抑制機構の違いを教えていただきました。
頸椎症の中でも関連痛型に有効な、後頭下筋群と肩甲背神経のアプローチのデモがありました。間欠的マニピュレーションや、触診のコツ、鍼の深さなど、映像でわかりやすく示していただきました。
中医鍼灸
まず総論からです。東洋医学と西洋医学を比較すると、西洋の解剖学に当たるものは東洋医学にはありません。西洋医学は人間の体は異なった器官の集合体で分解可能で、「形」=「働き」という考え方をする一方、東洋医学では人間の体は一つの有機体であり区別はできるが分解不可能で、「形」≠「働き」と考えるという違いを教えていただきました。
他、整体観念、天人合一思想、六気と六淫六邪、弁証論治と弁証の種類について講義がありました。
続いて各論です。頸肩腕痛の病因は経絡が通じていないために起こる経絡阻滞で、その治療法は疏通経絡となります。この治療を可能にするには、経絡の経路と経穴と鍼の打ち方を知る必要があるとのこと。今回の講義では頸肩腕痛の標本同治の局所・循経・本治穴、および奇穴の落頸と落枕が紹介され、実技で位置・角度・深さの解説とともに刺鍼のデモが見られました。
中渚穴では「直刺から弯曲させて中手骨の裏にあるイメージで」など、経穴位置の立体的な解説がありました。
経絡治療
総論では、西洋医学と東洋医学の違いを、哲学背景、基礎医学、診断学、治療学で見ていきました。
双方の異なる点のひとつ「疾病観」。西洋医学では健康が正常で病気が異常という二者択一である一方、東洋医学では健康と病気の間に「未病」という概念があり、健康はたまたま陰陽バランスがとれている状態でその維持には「養生」という考え方があるとのことでした。他、内外の陰陽、五行説の意義、経絡治療と中医鍼灸の差異の講義がありました。
つぎに各論です。頸肩腕症でみられる末梢性神経障害は筋により神経や血管が圧迫されている状態とのことで、触診で見られる特徴的所見を教えていただきました。
診断では末梢部位(下流)から中枢側(上流)へ線状硬結を辿り、治療は絞扼部位を緩める処置を上流から下流へ向けて実施するそうです。コツは「診断は下流から上流へ、治療は上流から下流へ」です。また、治療評価の解説がありました。
デモでは触診・刺鍼、運動鍼など、標治法の一連の流れを見ることができました。