第2期 第6回医鍼連携研修を下記要領にて開催しました。
日時:2019年11月17日(日) 受付開始 9:10
場所:東京大学医学部附属病院 入院棟A 15階 大会議室
カリキュラム
【臨床各論共通テーマ】 COMMON DISEASE への対応を確実に身につける 11月 頭痛
【東洋医学的な考え方について系統的な講義】 中医鍼灸 : 診断学 / 経絡治療 : 比較脈診
※ 現代医学:北里大学東洋医学総合研究所 川鍋伊晃先生
現代医学
総論で頭痛の起因部位、頭痛の分類、二次性頭痛鑑別のポイントを押さえた後、各論は、外来患者の過半を占める緊張型頭痛からスタート。単純な筋緊張だけでなく、中枢性機序の関与も考えられることから、鎮痛剤や筋弛緩剤と併せて、疼痛抑制系の機能低下を改善する薬を処方することもあるとのことでした。
片頭痛の発症機序は未だ不明な部分が多く、セロトニン神経を介した血管拡張・痛みの閾値低下・三叉神経への刺激等、いくつかの要素が絡んでいるとのことでした。前兆現象があるのは3割程度、両側性も多い等の先入観を正されるお話の後、急性期の特効薬であるトリプタン、予防薬として使われる抗てんかん薬等の薬物治療についての説明がありました。
二次性の頭痛については、要因別に症状の解説がされました。「外傷」「脳血管障害」「脳脊髄液減少」「特発性頭蓋内圧亢進症」「炎症性疾患」「頭痛薬の乱用による頭痛」等々…。
頭痛の原因は多種多様で、治療が遅くなると不可逆な場合もあるため、先生も絞らずに診断されているとのこと、レッドフラッグを鑑別する重要性を再認識しました。
現代鍼灸
一次性頭痛について、鍼灸治療のエビデンスマップ「有効性が認められ、推奨度が高いと評価」の紹介からスタートしました。
片頭痛は頸肩こりを高頻度で伴い、頸肩部の圧痛や緊張部位への治療が有効、三叉神経が関与することから側頭筋部や神経表出部位が治療対象となる、との説明がありました。
緊張型頭痛については、後頚部や肩甲上部、肩甲間部の圧痛や緊張部位に治療をして過緊張を緩和すること、また、頻発反復性緊張型頭痛は少ない治療回数で改善することがデータを活用して解説されました。
予防目的で鍼治療を行った場合、片頭痛は発作の頻度、緊張型頭痛は症状の強さがそれぞれ減じるとのことでした。薬物が効かない、若しくは、望まない頭痛患者にとって、鍼治療は有効な選択肢として期待出来るというまとめがされました。
実技は首肩背部と顔面の三叉神経領域(片頭痛)への刺鍼で、取穴のポイントと刺入の向きや深さ等についてのアドバイスがありました。
中医鍼灸
痛み=(経絡の)不通という中医学の病理機序に沿って、頭痛の部位別の経絡(後頭部―太陽経、側頭部―少陽経、前頭部―陽明経、頭頂部ー厥陰経(督脈))についての説明があった後、不通の原因となるつまりについて、内傷を中心に詳しく説明がありました。
身体の中に原因(ストレス、食べ物、外傷等)がある場合は、痛みの症状(激しい痛み、ぼんやりした痛み、圧迫感、頭重感等)も異なり、本治でもアプローチするそうです。
症状に応じた治療穴の説明があり、実技では頭蓋骨際の関所(玉枕関)の穴、後頭部痛の場合の遠端穴、気滞(ストレス)・痰濁・瘀血に対応した穴への刺鍼を行いました。
総論は診断学として、望診の代表である「舌診」の講義。データを保存・共有して検討できるという舌の利点を活かし、画像データを次々と見ながら、「色」「苔」「形」から分かる気血と臓腑の状態についての解説・分析がありました。
一番重要な「形」、変わりやすい「色」や「苔」、舌下静脈の信頼性に触れ、最後に舌診のメカニズムの説明で講義が終わりました。
経絡治療
簡略化された診断・治療法として比較脈診が提唱された時代背景に触れた後、69難解釈からスタートしました。【後段解釈】1経だけの虚実→自経に補瀉①、【前段解釈】2経が連続して虚実→虚している場合は自経と母経に補②、実している場合は自経と子経を瀉③。
この中で、現在臨床で残っているのが②の基本四証(肝腎虚証(肝虚証)、腎肺虚証(腎虚証)、肺脾虚証(肺虚証)、脾心包虚証(脾虚証))とのことでした。
虚がある経を見つける方法が比較脈診となります。脈の沈め方、指を止める位置、比較するポイント等々、ステップごとの留意点と証立てをする方法について解説がありました。
各論の頭痛では、「血管性」「こり性」「神経痛」に分類し、それぞれの要因と所見の特徴、治療ポイントについて説明がありました。(「血管性」では、緊軟脈、側頭部に静脈の怒張(酷くなると水滞)、自律神経を安定させる本治が重要、局所には弾入程度の刺鍼と鍉鍼…)
臨床実技では、どのタイプの頭痛でも有効な鍉鍼治療のコツが伝授され、こり性の刺鍼をする際には頭蓋骨際だけでなく上部の緊張も確認が必要等のアドバイスがありました。