第2期 第9回医鍼連携研修

第2期 第9回医鍼連携研修を下記要領にて開催しました。
日時:2020年2月16日(日) 受付開始 9:10
場所:東京大学医学部附属病院 中央診療棟2 7階大会議室

カリキュラム
【臨床各論共通テーマ】 COMMON DISEASE への対応を確実に身につける 2月 めまい
【東洋医学的な考え方について系統的な講義】 中医鍼灸 : 治療学 / 経絡治療 : 特殊な証の本治穴
 ※ 現代医学 :諏訪中央病院 リウマチ膠原病内科・総合診療科 須田万勢先生

現代医学

現代医学 講義風景
現代医学 講義風景

めまいの原因は大きく分けて、内耳に原因がある末梢性、脳血管や脳神経が原因の中枢性、全身性疾患の3つ、鑑別診断には問診が極めて重要で、先生は症状を演技で再現して確認できるくらい話を聞くそうです。どのようなめまいか(回転性・浮動性・立ちくらみ・ふらつき)を聞き出す有効な問いかけの方法や、持続時間、発症様式(単回急性、再発性・反復発作性)、発症の誘因等から分かることについて詳しく説明があり、レッドフラッグのまとめも行いました。

身体所見では、中枢性病変を見分けるHINTS法(前庭神経炎との鑑別感度は高いが、患者の過半を占めるBPPV(良性発作性頭位めまい症)を除外できないので、BPPV の理解が必須)と平衡感覚を見分ける検査法を学びました。

各論は、BPPV についての解剖と発症メカニズム、問診で把握できる症状の特徴、治療法について詳しい説明がありました。メニエール氏病は未だ不明な部分多く、西洋医学的な病態把握より東洋医学の気血水で考えた方が正確に理解できる気がするそうです。頸性めまい症は筋緊張による頸部神経の絞扼が要因と考えられることや、脳血管性疾患、低血圧、薬物によるめまい、心因性めまい等について、ポイントを押さえた説明がありました。

現代鍼灸

現代鍼灸 デモ風景
現代鍼灸 デモ風景

鍼灸治療は内耳の前庭機能に要因があるめまいに有効ということで、疾患を見分けるフローチャートの説明からスタートしました。

めまいに対する鍼灸治療のアプローチは、①内耳の血流改善を図って前庭機能異常の是正を図る②姿勢制御機能を向上させてバランスの安定化を図る、の両側面から行うそうです。

前者は、頸部の傍交感神経節に鍼刺激をすることで椎骨動脈の血流改善を促すということで、上頸神経節を意識した胸鎖乳突筋の刺鍼部位について詳しく説明がありました。実際、多くの患者にこの部位の緊張・圧痛がみられるとのことでした。

後者は、立位姿勢制御に深く関与している足底感覚を利用し、足底に温熱刺激を行います。足底全体を温めるよりスポットの方が有効という基礎研究の紹介があり、固有感覚受容器(メカノレセプター)が多く分布する部位が示されました。

実技は、頸部の刺鍼部位の確認方法と留意事項、足底の施灸部位の見つけ方のコツがデモによって示された後、刺鍼と施灸を行いました。

中医鍼灸

中医鍼灸 デモ風景
中医鍼灸 デモ風景

めまいが起こる中医学的なメカニズムの説明は、古典の記載を引用しながら行われました。古い順に、1つ目は黄帝内経に記されている「風」。ストレスによる心火や肝火、さらには心腎不交で熱が発生し、気流で風が起こります。二つ目は丹渓心法の「痰」。飲食不節による痰が頭部との疏通を阻害します。三つ目は景岳全書の「虚」。腎精不足や気血両虚によるものです。原因に対応する本治穴と頭部の標治穴の説明がありました。

総論は治療学。治療の流れ(四診→診断システムである弁証→論治を経て配穴処方→手技)、標本同治(標治は「どこ」、本治は「何故」)の後は治療穴の選び方(配穴処方)についてで、五行穴、原絡郄穴、兪募穴、八会穴、四総穴、八脈交会穴、交会穴の説明がありました。

また、中医鍼灸は強い鍼だけでなく、虚証の治法として補法の刺鍼を使うことがある、瀉法の刺鍼には得気を得ることが必要、ということを教わりました。

実技は、肝火や痰湿の本治穴に瀉の刺鍼、心腎不交の本治穴に補の刺鍼。中国鍼による補法の刺鍼手技(細く長い鍼で深くゆっくり痛くなく刺鍼し穀気を動かす)を中心に学びました。

経絡治療

経絡治療 実技風景
経絡治療 実技風景

総論のテーマは特殊な証の本治穴。東洋医学の人体観である「内外の陰陽」の復習から入りました。目に見えない働き(1.精神作用2.気血津液の独占)が本質で臓腑に属する、経絡を通して身体の各部位を回るので全ての病的な現象は経絡の変動として現れる、これに五行論を乗せた五行色体表をベースとして基本四証がある、という内容でした。

この基本四証に含まれない(=気血津液で語れない)ものが特殊な証で次の5つとなります。

【自律神経治療】交感神経系は肝経、副交感系は肺経の変動として現れる【腎精治療】出生後も腎精の影響が大きいという考え方に基づき、腎精の不足や不活性に起因する病態に用いる【原穴治療】臓腑機能の失調や低下に起因する病態(難病・免疫異常など)に用いる【陽実証】外感病(感冒)の時に用いる【陰実証】肝実証(瘀血)に用いる

各論のめまいについては、簡略に、基本的なチェック部位は耳鳴り・難聴とほぼ同じだが、胃腸症状がある脾虚の場合もあることに注意、というコメントがありました。

実技は研修生同士で脈診を行い、相澤先生のチェック後にそれぞれの本治法を行いました。

第1回 2 3 4 5 6 7 8

9 10 11 12 13 14 15

16 17 18 19 第20回

研修会レポート目次