第1期 第15回医鍼連携研修を下記要領にて開催しました。
日時:2019年10月20日(日) 受付開始 9:10
場所:東京大学医学部附属病院 入院棟B 1階 第1会議室
カリキュラム:
- 現代医学 : 悪性腫瘍と緩和医療
- 現代鍼灸 : 癌関連症状(抗がん剤副作用の末梢神経障害)
- 中医鍼灸 : 中風(脳血管症状)
- 経絡治療 : がん関連症状
現代医学
今月の現代医学は、東京医科歯科大学医学部付属病院 麻酔蘇生ペインクリニック科 大畑めぐみ先生にご講義いただきました。
内容は緩和医療の特徴、歴史、各論、緩和医療における鍼灸治療のエビデンスです。
緩和医療の対象となる悪性疾患は呼吸器、循環器、神経疾患、ADL を著しく低下させる慢性疾患と多岐にわたります。日本では緩和医療はがんを中心に発達しており世界的にみて大血管疾患の緩和医療は遅れているなど、緩和医療をめぐる現状について教えていただきました。
鍼灸治療が影響するかもしれない鎮痛薬のお話や、緩和医療における鍼灸治療のエビデンス等文献へのアクセスの仕方など、鍼灸へのご理解が深い大畑先生ならではの講義に、研修生は熱心に聞き入っていました。
中医鍼灸
テーマは「脳血管障害(中風)」です。
脳の生理とそれに関連する顔面麻痺や半身麻痺などの症状や、脳に入る経絡と経路についての解説があり、続いて中風の病因病機、弁証論治、治法が講義されました。
中風は中る場所により「中臓腑」と「中経絡」にわけられ、中でも「中経路」はさらに状態によって「痹病」と「痿病」に分けられ、症状や治法が異なるそうです。治法では脳を開通させる「醒脳開竅法」の紹介があり、中医鍼灸の3名医が用いている経穴を教えていただきました。
実習では共通して用いている「人中」穴をはじめとする経穴にペアで刺鍼しました。特に「人中」穴に刺すこと・刺されることが初めての研修生も多く、たいへん貴重な体験になりました。
現代鍼灸
テーマは「抗がん剤の副作用と鍼治療」です。
はじめにがんの治療法と分類について解説があり、その後に今回のテーマである抗がん剤の副作用による末梢神経障害の講義に入りました。
末梢神経障害を起こす主な抗がん剤の1つであるタキサン系の薬剤が末梢神経障害を起こす機序・種類・評価方法について理解したのち、がんと鍼灸治療の目的と末梢神経障害に対する鍼治療での鍼通電刺激の紹介がありました。
リスク管理の面では、英国の「鍼治療をがん患者に提供するためのガイドライン」から禁忌・注意事項などの紹介や、血小板減少による出血のリスクなどの説明がありました。
実習は、講義中に紹介された鍼通電刺激の経穴への刺鍼でした。
経絡治療
テーマは「がん関連症状について」です。
鍼灸師ががん関連症状に対してできることについて、①外科手術に起因する諸症状(術創部の疼痛・引き攣れ・知覚異常、浮腫、ダンピング)、②化学療法の副作用(消化器症状、手足末端の知覚異常、免疫低下)、③がん進行に伴う諸症状(刺激量について、突発的な症状)と、それぞれの状況に分けて学びました。
また、腫瘍そのものに対する刺鍼を行わないために必要な腫瘍の触診所見の解説がありました。
相澤先生が診て来られたがん患者さんの実例、死を受容できない患者さんとどのように向き合って来られたかなど、臨床家の先輩としてのお話しに研修生は引き込まれていました。
実技では、手足末端の疼痛や痺れなど知覚異常に対する鍉鍼を実施しました。